シリーズ《旅商人の小商い考》「“接客七大用語” 全部言えると売り上げが下がる。モノが売れなくなる?②」
「接客七大用語 」は

良い物を売り場に並べれば、ほっといてもお客さんがいっぱい押し寄せて、次から次へと勝手に売れていく時代に生まれた「大量のお客さんを効率良くさばく、無難に対応する為のテクニック」(接客)の基本になる言葉。

■ぜーんぶ「受け身」の言葉。接客七大用語は「非積極的七大用語」

■「モノが売れない」今には時代遅れで売り手(サービスの担い手)に「モノが売れる」という勘違いをさせてしまう言葉。

さてさて

各地で商いさせて貰っていると、呼んでくれたお店が館(テナントとして入っている大きな店舗、商業施設等)に入っている場合が結構あります。

朝、各テナントから聴こえてくるあの「接客七大用語」に去年の終わり辺りから違和感を感じるようになりました。

接客、サービス、販売業に関わっていた自分にとっても当たり前に使っていた言葉達。

ずっと、引っかかっている違和感の正体に気付くきっかけは、これもまた接客用語でした。

「ご来店ありがとうございます!」

8番目の接客用語と言っても良いかもしれないこの言葉を耳にするたび、思うようになりました。

「そんなにお客さん少ないの?店に来てくれた事を感謝しなきゃいけないほど?」




「ディズニーランドやUSJみたく入場料取ってるんじゃないんだから、来てくれただけじゃ、お金にならないでしょ?売らなきゃ、買っくれなきゃ、僕らのお給料出ないでしょ?」

「商品買ってくれる、サービスを利用してくれるお客さんこそ感謝するべき、ありがとうと言うべき人じゃないの?」と。

こんな事を書くと「放浪書房さんよ!客商売やっていて、そりゃないだろ?そういうもんじゃないだろうよ?このご時世、店に足運んでくれるだけで有り難いんだから」と叱られても仕方ない。

はい、ごもっともだと思います。

Amazonや楽天で家に居ながらボタン一つで買い物出来るのに、わざわざ店に足を運んでくれた人に感謝の言葉を言いたい。

ということでしょうか。もちろんすごく良く分かります。




お客さんに店に来てもらう。モノを売ることの「スタート地点」に立つのさえも難しい時代。

「接客七大用語」が時代遅れだと書きました。

だとしたらこの8番目の言葉「ご来店ありがとうございます!」は今の時代にマッチした最先端のナウい言葉なのかも知れません。

でも、あえて言う!小売業の未来の為に。




て、おい!それじゃ駄目だろ?!







そこで終わらせちゃ駄目だろ!!




「いらっしゃいませ」「ご来店ありがとうございます!」(±0点)!




お客さんの目も見ず、無闇に連発する「ありがとうございます!」(-1点)!!




「(お買い上げ)ありがとうございます!」そう言えてはじめて、やっとこさ(+1点)でしょ!!




「お買い上げありがとうございます!」







そう大きな声で言えるよう、お客さんのアクション待ちの、無難な、当たり障り無い「接客」ではなく【 積極的七大用語】でお客さんに商品を売らなきゃいけない、買ってもらわなきゃいけない。





誰でもない。貴方自身が売らなきゃいけない。






そうじゃないと、お給料払え無いよ。お店潰れちゃうよ。

そんな当たり前を売り場に立つ人間、一人一人が理解しているんだろうか。

良い物を売り場に並べれば、ほっといてもお客さんがいっぱい押し寄せて、次から次へと勝手に売れていく。そんな時代はとっくの昔に終わりました。

今は「モノが売れない」時代なんです

正しくは「売ろうとしないと売れない」時代。




だからこそ、商人の技量と熱意が試されてる時代。



朝から元気に、大きな声で「接客七大用語」を唱和させるなとは言わない、確かに使うシーンもあるのだから。(内三つの用語は元気に大きな声で言う機会は少なそうですが…)

でも今の時代本当に教えなきゃいけないのは



「いらっしゃいませ!」「ご来店ありがとうございます!」から「お買い上げありがとうございます!」へ繋げる為の《途中経過》《道筋》=【積極的七大用語】があるという事!






そこを考えて、実践して、成果や効果を検証する。その繰り返しの中にこそ小商人(こあきんど)の飽きない(商い)面白さがあるという事をスタッフに教えなきゃいけない。

そして実際にやらせてみる。上の人間にとっては結構な勇気と、手間、フロア回しのテクニックが要ります。

でも、そうしないと、何年勤めてもスタッフは「プロの品出し」「プロのご案内」「プロのクレーム担当」にしかなれない。

そして、いつしかつまらなくて辞めてしまう

スタッフならまだしも、お客さんにつまらないと思われたら…

おお怖!

それにしても、店に来るだけで感謝されてしまうのであれば、お客さんも楽チンです。(僕なんかは何か買わなきゃ悪いなと思ってしまうタチなんで)

お客さんは胸を張って堂々と、話題の新刊を立ち読みして、土曜昼の情報番組で取り上げられたあの便利グッズを確かめに行って、流行りのコートを試着して、家に帰ってからAmazonや楽天で注文する。(店で買うより安いし、品切少ないし、すぐ届くし、ポイント貯まるし、接客の悪さにイライラすることも無い)



このまま行ったら僕らの店も、百貨店も、新刊書店も、メーカーの展示スペースになってしまいそうです。



てか、もう、そうなりかけているんです。

こんな話しがあります。




Q「お店で買い物するのを躊躇ってしまうのは何故ですか?」というアンケートの上位には



○「店に出向く暇が無い」

○「買わなきゃいけない (売りつけられる)と思ってしまう…」

○「接客がウザい」






がくるそうです。これだけ見ても店でモノ買うのってハードル高いんです。

でも、逆に言えば、そんな利便性や精神的なハードルを乗り越えて、店でしか買えなかった一昔前ではなく、ネット販売全盛の時代に、数ある店の中で貴方のお店を選んで貴重な時間や手間をかけて客さんはお店に来てくれているんです。(つまり、お店でモノ買うという行為のファン!)

これはチャンスです!でも、それと同時に「ネットよりも店に出向いて買う意味や価値はあるの?」とお客さんに常に試されていると僕は思っています。

だから、お客さんが何も買えずに店を離れる時、お客さんに対して情けない、申し訳ない気持ちになります。わざわざ足を運んでくれたのに、「気に入る商品に出会って、それを買って自分のものにする」という楽しみを提供出来なかったのだから。

これが続くと、お客さんは「お店での買い物に絶望してしまう」と僕は思っています。




させる訳にはいかない。






いつも、そう心に誓って商いしています。

ちなみに放浪書房も他の小商いも、足を止めて商品を見てくれたお客さんに、ありがとうと言う事はありません。

理由は、買ってくれたお客さんに特別な思いをしてもらいたい。特別扱いをしたいから。そして本当の感謝を伝えたいからです。

何も買えない(買えなかった)お客さんには笑顔で会釈はします。あと、向こうから「ありがとう」と言ってくれる人には最高の笑顔でありがとうと言うようにしています。

接客七大用語のありがとうとは質が違います。




さて、そろそろまとめです。(長いわ!!)




今回の記事、「“接客七大用語” 全部言えると売り上げが下がる。モノが売れなくなる?」というタイトル。もうお分かり頂けましたでしょうか?




あの七つの言葉の中には、実はお客さんにモノを買ってもらう、サービスを利用してもらう事に直接繋がる言葉は一つも無いんです。




それは、つまり「モノが売れなくなる」言葉とは言いませんが、「モノを売らなきゃ!お客さんに喜んでもらって、楽しんでもらって、店のファンになって貰わなきゃ!」と売り手が思わなくなっちゃう言葉。なのです。

しかも、あれって、「いらっしゃいませ」から「ありがとうございます」までの「店に来て、買ってくれる前提」のフルコースになってんだもん。

タチが悪い。

※接客七大用語、要らない、使うなって話しじゃないですから。あしからず。

さぁ、いよいよ次回最終回!!
放浪書房の「今って、モノ売れますか?」という無責任な問いに某大手ショッピングモールの担当者さんが出した答えは?!!

乞うご期待!!
焦らしてごめん!!
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