大好きな時間なんだもん。お願いだから一人にしておくれ。
大好きな時間がある。



この時間の為に旅商いしていると言っても言い過ぎじゃないかもしれない。

この時間だけは誰にも邪魔されたくない。一人でじっくり味わいたい旅商いのハイライト。




それはいつも「後片付け」の「後」にやってくる。



最後のお客さんを見送り、屋台に取り付けたライトの明かりを一つ一つ順番に消していく。

場所を提供して下さったお店の方やイベント主催者の方に終わったことを伝えて片付けを始める。

商いのタネを仕舞い、備品を決まった手順で決まった場所に蔵う。

屋台をいつもの手順で解体する。次に備えて故障や不備を点検するのも忘れちゃいけない。

すっかり年季の入ったケースに屋台を入れてやる。

ここまではお手伝いしてもらう時もある。みんな良い人ばかりだから




とみーさん、車に積むのお手伝いしますから、何なりと言ってくださいね!!」

毎回そう言ってくださるので


「いやいや、ここまでして貰えたら、後は一人で大丈夫です!お手伝い頂こうにも後はテトリスのように隙間なく積んでくだけですから!」



毎回そう言うようにしている。
荷物を載せる前に必ず御礼をして、お別れをする。

戻られたのを確認して、近くの自販機で買ったドリンクを開ける。

ミルクの入った缶コーヒーの時もあれば炭酸の時もある。一口二口三口と飲む。これがもの凄く美味い。美味過ぎる。

ふーっと息を吐く。気持ちを商いモードから切り替える儀式。

必ず半分以上残しておく。煙草吸えたらこんな時は一服するんだろうな。さぁ、やるか。

放浪号のトランクを開けるとだだっ広い荷室が広がっていて毎度のことながら空っぽだとこんなに広いんだと少しびっくりする。



荷物を所定の場所に、決まった順番で入れていく。違う場所に置くとうまく収まらないだけでなく何だか気持ち悪くて仕方ない。
荷室の床は勿論、セカンドシートから向こうも見えない。後ろ見えなくて怖くない?と聞かれるけど、心の目でちゃんと見えている。

てのは嘘で最初から見えないんだから怖くなりようがない。サイドミラーとバックカメラもあるしね。

荷物が動かないくらいキチっと詰まれば完成だ。

バックドアを閉めずに満杯になった荷室を眺めながら、出会ったお客さんや売れていった商品を思い返したり、これから向かうまだ見ぬ商いの場所を想像しながら残りの缶コーヒーを飲み干す。

なんとも言えない充足感と、心地良い疲れ。少しの寂しさ、浮き足立つような感覚が楽しい。

この時間は誰にも邪魔されたくない。

この時間の為に放浪書房は旅をしています。商いをしています。だから皆さん、ほっといてください。見学もご遠慮ください。恥ずかしいから。(笑)

前に読んだテキ屋さんの本でも同じことを言ってた。この時間が一番好きだって。

諸先輩方に少しは近づけたろうか。

あ、旅から戻りました。ひと月ほど千葉に居ます。待たせてしまっている屋台のオーダー分製作したり、次の商いのネタ作ったり、屋台改造したり、11月からまたひと月程旅に出ます。
23:24 | 店主 | その他   

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