放浪11日目。長岡駅前店オープン!新潟県初出店は20年来の友人と一緒に。
長岡の街を1日かけて探索した日の夜。
バイパス近くのスーパー銭湯は混んでるし、ドライヤー有料なので少し離れた温泉施設まで足を伸ばした。
脱衣所の扉の前でかかってきた電話は登録してない番号だった。
出ると、聴き覚えのある懐かしい声。
10年前にお互い音信不通となった高校からの友達のユウイチだった。
高校の時、倫理の授業に自由課題があって、何を思ったか「通学用ママチャリで大船まで行く!」にした。
演劇や映像に興味があって、単純に鎌倉シネマワールドに行ってみたかったのだと思う。
甘酸っぱい自分探しは、高校卒業してから現在まで続くので、それではない。目的を持った青春のプチ冒険だ。
1人は不安だったから仲良かった友達のユウイチに声かけた。
いいよ!意外とあっさり承諾してくれて、ある日の深夜ママチャリで走り出した。ユウイチのお母さんが持してくれた、おにぎりの握り方と塩気の絶妙さにビビッたのを覚えてる。
途中、多分、市川過ぎたあたりのマンションの軒下で野宿したんじゃないかな。側溝の中で寝た気がする。
少し微睡んだ程度で明け方前には起きた。「トミは側溝(速攻)で爆睡してたけど、変なおじさんが覗いてた」と言ってた。ユウイチは眠れなかったらしい。
無事鎌倉につき、シネマワールドを見学。学校休んで1泊2日の旅だった。
彼が3年間の皆勤賞を棒に振ってまで付き合って事を後になって知る。
ユウイチとは本当にしょっちゅう一緒にいた気がする。
ナイキのスニーカーにハマったのも、エヴァンゲリオンに夢中になったのも彼の影響だった。
高校卒業して、俺は旅にハマり、バイトしてお金が貯まると国内をチャリや歩きで旅する、「正しい放浪ライフ」を謳歌し、ユウイチは大学生になり、女の子に興味を持ちオシャレや車に目覚め、スノボにハマる「正しいキャンパスライフ」を謳歌していた。
別々の時間と空間、人間関係に生きる中でだんだんと疎遠になっていった。
携帯も壊れて履歴やデータが消え新しい番号になったのは致命的だったし、共通の友人も居たのだが、彼もアドレスを消失するなど、皆して連絡取れずにいたとは、トホホである。
音信不通のまま、10年?いやいや13年経っていた。
時は流れ、新潟県の長岡。
こんな所で再会出来るなんて思ってもいなかった。
「ほぉ、良い本がありますねぇ(笑)」
長岡の駅前で屋台の設営をしてたら後ろから声がした。
ユウイチだと声ですぐわかった。
変わってなかった。
昭和の映画俳優のような濃ゆい顔にパーマがかった短髪。色黒。
グラサンかけて開襟シャツ着て店の前に立たれたらショバ代払うかもしれない。(笑)
そんな強面な見た目に反してとっても温和で礼儀正しく、仲間にいつも優しかった。
変わってない。
と言っても、2人とも35。おっさんの歳。それなりに外は崩れてくるわな(笑)
でも、真ん中の部分はきっとあの頃のままだと思いたい。
ユウイチも同じ気持ちだったんじゃないだろうか。
直ぐに止まった時間が動き出した。
彼は結婚して2人の子供のお父さん。今は上越市に暮らしていた。
勤めは柏崎。
実は数日前、フェイスブックで俺の名前を検索したらヒット。友達申請をしてきてくれた。それ以来ブログとフェイスブックを見ていてくれ、アップした柏崎の写真見て連絡をくれたのだ。
そして、月曜日が休みだった彼は車で2時間かけて、こうして長岡まで会いにきてくれた。
「昼飯なんか食べた?俺居たら仕事の邪魔にならん?」
気配りも変わらない。
でも、こちらの言葉のイントネーションにびっくりする。
住みはじめて4年らしい。
こちらの地理や街の様子にも詳しい。染まったなぁ(笑)
「ホームページ隅々までみたよ☆面白ことやってるね!これ食べて、あと、これから外は暑いからさ、これ使って」
差し入れに山程の食べ物飲み物
。値札貼ったままの冷却タオル(笑)
を貰う。
「こういうところも変わらんやろ」と笑う。
20代、ユウイチの勤めた会社は100円均一の最大手。出店ラッシュに売上のテコ入れ、全国出張に次ぐ出張、赴任に次ぐ赴任だったらしい。
「言葉は色々混ざってるかもしれんね」
知らない土地の水に慣れるように、言葉から慣れていく。自分を染めていく。他所の土地の人とコミュニケーションを図る上でとても効果的なのかもしれない。
長岡駅から商店街に続く、通路の花壇横に座り、店番しながらユウイチの買ってきた弁当を食べる。高校生の頃、コンビニの駐車場でよくやったっけ。そう考えると、やっぱり大して変わってないな俺達。
でも正直言うと
片や家族も定職もある正しい社会人。片や独り者の大道商人兼旅人。じゃないですか。
10年経てば色々変わってるだろうし、あの頃のように話す事なんて出来るんだろうか。
少し不安だった。
お客さんとは売り手、買い手、本や旅や放浪書房のスタイルという共感や共通項を持って、出会いをお互いに楽しむ。
平等な対価の交換がある。
放浪書房とみーとして知り合った人達ともそれは当てはまると思う。
だから、普段は一切気にした事がない。でも富永浩通として、旧い友人に会う。そんなシチュエーションは滅多にないから、、、
でも、無駄な心配に終わったな。
10代の、恥ずかしくて、たわいもない、とるにたらない時間を一緒に過ごした。その履歴は決して消えない。
リダイヤルすれば、またすぐ繋がる。
お客さんが来て中断することもあったけど、10年分の出来事、お互いの旅の話をした。
ユウイチは話が興に入っていても、店に人が立ち止まるとすっと陰に隠れる。そうして放浪書房とお客さんとのやり取りを楽しそうに眺めている。
「売れた?」
「うん、文庫本買ってくれたよ。」
「お!良かった!こんな出会いで本買ったら、あのカップル忘れんね!」
ユウイチの仕事も小売業だから(規模が違うけど)売るという行為自体は当然だけど、旅先の、しかも無許可の路上で、屋台の本屋なんて、想像の範疇を超えていたみたいだ。
折角来てくれたのに、とこちらも思うのだが、それなりに楽しんでくれているようで良かった。
きっと本当に放浪書房のホームページを端から端まで見てくれたんだろう。
うちの店の、コンセプトやテーマ、商品やサービスの本質(実はあるのだよ!)を理解してるのには正直びっくりした。
それに、タイミングを図りながら、こんな質問もしてくる。
「トミ、これだけで食べて行けるの?」
この質問は昨夜のお嫁さんとの家族会議で議題に上がったらしい。
カッコつける必要もないし、店番一緒にしてたら誰が見ても分かる事だから、正直に話す。
納得がいったらしい(笑)
「正直、路上の本屋でさ、皆冷たい目で通り過ぎて、売れても一冊とかで。駄目な時も多くて、旅は他でお金貯めてやってると思った。(←随分な言われよう笑)
こんなにちゃんと形になっていて、色んな人が立ち止まって、あんなに話しが広がったり、心が通じあっていくと思わんかったよ」
(※彼の言葉を若干都合良く脚色し
て抜粋しております。Facebook経由で彼に確認とらないよう注意しましょう)
と。
「でも、やっぱり、トミ、らしいわ!」
これが一番嬉しかった。
いつからだろう。社会に出てからだろうか。全く新しい人間関係に入っていく時だろうか。
自分がいっぱしの何者かであるように、外に発信していくようになったのは。
それは肩書きだったり、職業だったり、社会的な地位だったりするんだろうけど、単衣、二衣と重ねていけば自分を守ってくれるし、貧相な本体が立派に見える。歳を重ねるごとにその衣は増えていって着膨れしていく。こうなると「今更、脱ぐなんて、熟女女優のヘアヌードより見苦しいわ」ってなるから、なかなか脱げない。
「私、脱いでもすごいんです!」
って、なりたいと常々思う。
それは、自分らしく生きている、素の自分で勝負しているという証拠だから。
自分らしく居られているだろうか。
常に考えてきたつもりだし、これまでの生き方や価値観や信念にそってやってきた。つもりではいるけど、やっぱり確信を持つのは難しい。
客観的に見てどう?って所も気になるお年頃。
だから、何者にもなれなかった衣の自分を知っていて、そこで時間が止まっているユウイチに、
「トミ、らしいわ!」
と言って貰えたことは、
ちゃんと自分らしくやれてるよ!いいんじゃないすか!?とお墨付きを貰えたようで、凄く嬉しい。
帰り、ユウイチをお風呂に誘う。閉店まで温泉の露天風呂で話した。
仕事づけの20代から、30代。結婚して旦那さんになって、子供が出来てお父さんになって。
社会的責任を果たしながら、今居る場所に根を張ってしっかり生きているユウイチは俺からしたら、自分の父親同様、本当に凄いと思う。尊敬に値するよ。
俺も、大きくなったらそうなれるだろうか(笑)
「将来、トミの奥さんや子供とも家族付き合いして、お互いの家行き来してさ、一緒に遊ぶの夢なんだよね!」
とユウイチ。
遠ーーーいな!その夢!(笑)
テントとか車じゃ駄目??(笑)
とにかくだ、ユウイチ、こんな僕ですが、これからも何卒よろしくお願いします。次は、建設什器のオモチャお土産にお家遊びに行きますので。
そいや、初の新潟県出店はというと、途中運悪く、市役所の道路施設課の方に遭遇、やんわり撤収を指示されるも、「見えない境界線の法則」を使い移動。その後、平穏無事に商いを続ける事が出来ました。
売上は、あんまり奮わなかったけど、深夜特急好きの女性と話が盛り上がったり、カップルで来てくれたり、車中泊で日本を回った男性や旅帰りの男性、「こんな所で無許可で出していいの!」と注意してきた女性が最後に串田孫一の本買ってくれたりとバラエティに富んだ出会いに恵まれました☆
少なくとも駐車場代と今日明日の滞在費になりました。
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0:33 | 店主 | その他   

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