今から5年前、京都でオープンした放浪書房の初日に書いたブログ。
この時の感動も思いもまったく色褪せない。
一冊売れるたびに嬉しくて彼女に電話したのを覚えてる。
ゼロハリバートンおじさん!
いたいた!
日付…
2006年4月29日のブログ
タイトル…
『昨日の続きの放浪書房』
「これ一冊もらえる?」
一瞬、自分にかけられた言葉とわからず戸惑う。
「河童さんは良いわよね。」
またまた戸惑う。
あー分かったぞ!妹尾河童のことか!
手には「河童の覗いたヨーロッパ」。
わーい!本日初のお客様は優しそうなおばーちゃん。話してみると懐かしき江戸言葉。東京からこっちに来たんだって。
お買い上げありがとうございます。
もう単純に嬉しい。
僕の選んだ本を同じ価値観を見出だしてくれて、僕の付けた値段が妥当であるとお金を払ってくれる。
路上で、しかも200冊に満たない店だけど、品揃え、本の並び方、値段、POPや看板に至るまで、僕の主張と個性、思いをこめている。
そこに共感して、その代価としてお金を払ってくれるのだと思う。
面白いもので、一冊売れ出すとお客がお客を呼び、足を停めてくれるようになる。
その後も神保町スタイルのお兄さん、大学生、星野道夫好きのおばさん、植村直巳好きのケーブルテレビのディレクターさん、カップル。一時間に二冊くらいのペースで売れていく。
全部の本は目を通して薦める事が出来る。何度も読み返したい本ばかりなので、売れると寂しい。
なんて、商売人失格なのであります。
色んな人が来るもので、手に持つ、ゼロハリバートンのトランクの中は拳銃が入っているというおっさん。
しかも、旧ソ連製のモーゼル!撃たしてやりたいって!?
いえいえ滅相もない!遠慮しときます。
ただでさえ道路交通法違反ですのに、この上銃刀法違反喰らったら親が泣きます。
その他にも「店の名刺持ってないですか?」とか
「凄くいい本ばかりで貴方の個性が出ている」と言ってくれる人。
中には、お巡りさんに叱られる僕を庇って喧嘩してくれたギャラリーのお兄さんもいました。
いやー面白い!僕は高校を卒業してから旅の面白さにハマって、外国こそ行きませんが日本国はかなりブラブラしてきました。
今年で10年目。
なんだか物足りなくなってきたんです。
えっ?どうしてかって?
うーん、旅ってね非日常の行為なんですね。
どれだけ歩いて、方々を見て、その土地の物を口にして、街を理解したと思っても、どだい越えられない溝というか、壁があります。
現実味がないというか。所詮は旅人だからという思い。
あ、勘違いしないで。
それが悪い事じゃないんですよ。
その土地を行き交う旅人として見る、接する、良いとこどりで構わないと思いますよ。
楽チンですから。
でもね、一歩踏み込むからこそ見えるものもあると思います。
だって旅って出会いですもん。 それが僕にとってはこの商売なのかもしれない。
今日つくづくそう思いました。
旅する本屋「放浪書房」は「誰かと本との出会いを演出します」
それは新しい興味や関心、知識、人との出会い。
人から人へ本が繋ぐ、自由な心のバトンタッチ。
この商売をしていると、普通に旅していては味わえない、不思議な出会い、楽しい出会いが満載です。
机の上、電車の中、家事の合間、布団の中。今日皆さんの手に渡った本達が、皆さんを素敵な旅に連れていけますように。
「ここではない、どこかへ。」
旅する本屋 「放浪書房」店主トミー。
本日の売上、
12冊と特製栞二枚で3250円。
22:39 | 店主 | その他   

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