認知すること
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この平安神宮の大鳥居の下では今日で二回目。
実は初日の朝、不思議な人に出会ったんです。
その日、一人目のお客さんになってくれた女の子と話しをしていたら、どこからともなく、ニコニコ笑顔のお父さんがやってきました。
そうだなぁ、芸能人でいうと「あしたのジョー」の主題歌歌ってる人、誰だっけ?あの人を日焼けさせた感じかな?
制服を着て、胸にバッチ付けてたから初めは図書館のガードマンかなぁって。
うわぁ、追い出される?ってちょっと警戒。
「旅をしながら売ってるの?」
はい。あれ、本持ってるし古本市の帰りかな?
君の名前は?
そうトミー君か。よし、君の事を認知したよ。 ?
僕は今、「認知科学」に興味を持っていてね。
とみー君を認知した事で、僕の脳の中に、とみー君が広がるわけさ。わかるかい? はぁ。
その時、吹いた風を受けておとーさんが言いました。
僕は将来モンゴルをタクシーで走るのが夢なんだよ。モンゴルの本も沢山読んでいるし、モンゴルの地図の上をね、その日走った走行距離分記しを付けて頭の中で旅をしているんだよ。
そう、平野さんはタクシーのドライバーさん。
今吹いた風もね、目を閉じてここをモンゴルだと僕が認知したら、ここはモンゴルになるのさ。
うん。それなんです。
僕の本屋の提供したいものって。
「ここではない、どこかに行きたい。」
人は皆、多かれ少なかれ旅に憧れます。
ただ、色んな事情でそう簡単にはいかなかったりします。
でもね、旅の本を読めば、それがモンゴルであろうと、タイのカオサン通りだろうと、アマゾンの奥地、四国の遍路道でも、電車の中からでも、机の上からも、気持ちのいい公園の芝生からでも旅に行けるんです。
そこに、その場所を認知さえすれば。
それぞれの自由な心の旅。
それに出会う手助けをしたい。演出したい。
そう思うんです。
ある一人のお客さんが言いました。「僕は今、なかなか旅に出る事ができません。
でも、いつか行ってみたいと思ってるんです。
でもね、頭の中で、僕はインドもタイも香港も旅したんです。」
「今買った本で、またインドに旅立ちますね。」
妹尾河童の「河童の覗いたインド」を手に、
彼は旅に出ました。
いい旅を。
平野さん、いつか貴方の運転するタクシーがモンゴルの草原を走れますように。

16:43 | 店主 | 出店    


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