あの夜のこと。
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鳥取砂丘に夜が訪れました。
自分と砂丘との間に布一枚でも入ってしまうのが勿体なくてテントを張るの止めました。
砂漠の夜を肌で感じてみたかったんです。
とりあえず風除けにと高さのある山の陰を選んで荷物を降ろして腰かけてみました。
若干ではありますが湿気が上がってきます。
テントの中に敷く防水シートを取り出して二つ折りにし中にザックやキャンプ道具を入れました。
風が強くなった時の為にシートの折り目は風上に向けてザックを重しにします。
傾斜になっているのでどうしても砂が入ってきますが気にしません。
だって、ここは砂と風の世界。お邪魔しているのはこちらの方ですから。
カレー味のヌードルとパンで夕食を済ませた後、暗くなってからの準備をします。
野宿場所の周りの幾つかの景色のイイ場所。そこまで何度か往復して足跡を残す作業です。
今夜は月も出ていないし砂丘の真ん中に街灯なんかありませんから一度道に迷ったら死ぬ事はないにせよ野宿場所を見つけるのは難しいでしょうから。残した足跡を辿れば無事に野宿場所に帰れる
はずです。
でも、実際に夜を迎えてみたら驚きました。
よく見えるんです。薄ボンヤリではあるけど稜線の形、野宿場所の位置、うっかり置き忘れた水筒も見えます。
僕の眼が暗闇に馴れたんでしょうか。
それとも日本海に浮かぶ漁火の灯のせいかもしれません。
ヒュン。ヒュン。
耳元ぎりぎりを通り過ぎる風の音。
ブワッ。
眼前で爆ぜるような、舞い上がるような風の音。
色んな風の音を聴きました。
朝からずっと裸足です。
分厚いと思っていた足の裏も実は繊細。砂の感触や温度が手で触れるように伝わってきます。
昼間以上に距離感がつかみにくくて同じ場所から漁火を見ている筈なのに毎回野宿場所との距離が違う気がしたり。
何度かプチ遭難もしました。
空は厚い雲がかかり、今にも雨が降りだしそうです。
風が強くなってきたので防水シートに潜り込みます。
顔を中に入れちゃうと吐く息で結露しちゃうから顔だけヒョコリと出してぼんやり空を見上げていました。
ウトウトしてきました。
20:50 | 店主 | その他 野宿